【医学コラム Vol.14】

ストレスがたまると甘いものが欲しくなるのはなぜ?

※このシリーズは専門医から教わったことをコラムにしてます

目次

〜慢性的なストレスとコルチゾール・血糖値の関係〜

「仕事で疲れた日は、無性に甘いものが食べたくなる。」

「イライラするとチョコレートに手が伸びる。」

「お腹が空いているわけではないのに、ストレスがたまると何か食べたくなる。」

こんな経験はありませんか?

そして食べたあと、

「また食べてしまった」

「我慢できない自分は意志が弱いのかな」

と後悔してしまう方もいるかもしれません。

今回の医学対談では、「ストレスと食欲」について道下先生にお話を伺いました。

先生のお話で特に興味深かったのが、

ストレスを感じたときに甘いものが欲しくなる背景には、コルチゾールや血糖値の変動が関係する場合がある

というお話でした。

ただし、先生は最初にとても大切なことも話されています。

「ストレスを感じると食べたくなる人もいれば、逆に食べられなくなる人もいます。」

つまり、

「ストレス=必ず甘いものが欲しくなる」

という単純な話ではありません。

では、なぜストレスを感じたときに食べたくなる人がいるのでしょうか。

その仕組みを見ていきましょう。


そもそも「ストレス」とは何?

先生は、ストレスについて非常に分かりやすく説明されていました。

「身体にとってストレスとは、生物学的な危機です。」

私たちがストレスを感じると、身体は、

「何か危険なことが起こっているかもしれない」

と判断します。

すると身体は、その危険から自分を守るための準備を始めます。

先生が例に出されたのが、猫です。

猫が危険を感じると、

毛を逆立て、

尻尾を立て、

身体全体を緊張させます。

これは、いつでも逃げたり戦ったりできるようにするための防御反応です。

先生は、

「人間がストレスを感じているときも、身体の中ではこれに近いことが起きています。」

と説明されていました。


ストレスを感じると分泌される「コルチゾール」

ストレスを理解するうえで重要になるのが、

コルチゾール

というホルモンです。

先生は、ストレスを感じたときにはコルチゾールなどのストレス反応に関わるホルモンが分泌され、身体が「臨戦態勢」に入ると説明されていました。

ここで大切なのは、

コルチゾールそのものが悪いわけではない

ということです。

先生のお話では、危険に対応する必要がある場面では、一時的に身体を動かしやすい状態にしたり、思考を働かせたりするために必要な反応だと説明されていました。

問題になるのは、

その状態が長く続くことです。

猫がずっと毛を逆立てたまま生活していたら、疲れてしまいそうですよね。

人間も同じように、

仕事、

人間関係、

情報、

将来への不安など、

さまざまなストレスが続けば、身体が長時間「臨戦態勢」になってしまうことがあります。

先生は、

「一時的な反応そのものより、その反動や長く続くことが問題です。」

という趣旨のお話をされていました。


コルチゾールと血糖値には関係がある

では、これが「甘いものが欲しくなる」という話と、どのようにつながるのでしょうか。

先生は、ストレスを感じたときの身体の反応について、

「ストレス系のホルモンが分泌されると、一時的に血糖値が上がります。」

と説明されていました。

身体が危険を感じたときには、すぐに動けるようエネルギーが必要になります。

そのため、身体は血液中に利用できるエネルギーを準備しようとします。

血糖値が上がると、それに対応してインスリンが分泌され、血糖値を下げようとします。

先生のお話を簡単に整理すると、

ストレスを感じる

コルチゾールなどが分泌される

血糖値が上がる

インスリンが分泌される

血糖値が下がる

という動きが起こります。

そして先生は、

「血糖値が下がったときに、イライラしたり、何かを食べたくなったりする人がいます。」

と話されていました。


甘いものを食べると「楽になった」と感じる理由

血糖値が下がったタイミングで甘いものを食べると、血糖値は再び上がります。

すると、

「なんだか落ち着いた」

「元気になった」

「イライラが少し収まった」

と感じることがあります。

先生は、

「何か食べることで血糖値が上がり、解消されたように感じることがある。」

と説明されていました。

この体験を何度も繰り返すと、

「ストレスを感じたら甘いもの」

「イライラしたら何か食べる」

という行動につながる場合もあります。

だからこそ、

甘いものが欲しくなることを単純に

「自制心がない」

「我慢ができない」

だけで考えるのではなく、

身体の中で何が起こっているのかを見ることも大切なのです。


現代人は「臨戦態勢」が長く続きやすい

先生は、昔と現代ではストレスの種類も変化していると話されていました。

自然界で生活していた時代であれば、

敵が現れた、

身体に危険が起きた、

お腹を壊した、

といった比較的分かりやすい出来事がストレスになっていました。

危険がなくなれば、臨戦態勢を解除できます。

しかし現代では、

仕事のプレッシャー、

人間関係、

SNS、

大量の情報、

将来への不安など、

原因を一つに特定できないストレスが日常の中にたくさんあります。

先生は、

「情報量が多すぎて、常にストレスを感じているような状態になりやすい。」

というお話もされていました。

身体は休んでいるつもりでも、頭の中では仕事のことを考えている。

スマートフォンを見れば新しい情報が次々と入ってくる。

こうした環境では、身体が「もう安全だ」と判断する時間をつくりにくいのかもしれません。


「食べたくなる人」と「食べられなくなる人」がいる

ここでもう一度、先生が強調されていたことを確認しておきましょう。

ストレスを感じたからといって、すべての人の食欲が増えるわけではありません。

先生は、

「人によっては食べられなくなることもあるので、一概には言えません。」

と説明されています。

ストレスの種類や、その人の身体の反応によっても異なります。

大切なのは、

「私はストレスを感じたとき、どんな反応をしているだろう?」

と自分自身を観察することです。


ここからは一般的に言われていること

ここからは、先生の発言ではなく、一般的な健康管理として考えられている内容です。

ストレスによる食欲の変化や血糖値の大きな変動を防ぐためには、食生活や生活リズムを整えることも大切です。

例えば、

・食事を極端に抜かない
・甘い飲み物を日常的に摂りすぎない
・主食だけで済ませず、たんぱく質や野菜なども組み合わせる
・睡眠時間を確保する
・適度に身体を動かす
・ストレスを感じたときの自分の食行動を観察する

といったことです。

「甘いものを絶対に食べない」と極端に制限するのではなく、

なぜ今、自分は甘いものが欲しいのだろう?

と一度考えてみることも、自分の身体を知るきっかけになります。


まとめ

ストレスを感じたときに甘いものが欲しくなることは、単純に「意志が弱い」という話ではありません。

今回の医学対談では、

ストレスを感じる

身体が危険だと判断する

コルチゾールなどのホルモンが分泌される

血糖値が変動する

人によっては食欲が変化する

という身体の反応について先生からお話を伺いました。

そして、もう一つ大切なのは、

ストレス反応そのものは、身体を守るために備わっている仕組みだということです。

問題は、その状態が長く続いてしまうこと。

甘いものが欲しくなったときも、ただ我慢するのではなく、

「最近、疲れていないかな?」

「ストレスが続いていないかな?」

「食事の間隔が空きすぎていないかな?」

と、自分の生活を振り返ってみる。

身体から出ている小さなサインに気づくことが、自分の健康と向き合う第一歩になるのかもしれません。

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