ファスティングが合う人・合わない人
※このシリーズは専門医から教わったことをコラムにしてます
〜「食べない=腸に良い」とは限らない。自分の身体に合った腸活とは〜
「腸を休ませるために、ファスティングをした方がいいですか?」
「16時間ファスティングはいいですか」
美容や健康への関心が高まる中、「ファスティング」や「断食」という言葉を目にする機会が増えました。
一定期間、食事を控えることで、
「身体が軽くなった」
「食べすぎを見直すきっかけになった」
「胃腸がすっきりしたように感じる」
「思考がクリアになる」
「味覚が変わり食事を見直すきっかけになった」
という方もいます。
一方で、
「頭痛がした」
「力が出なかった」
「冷えが強くなった」
「終わった後に食欲が止まらなくなった」
という方もいます。
なぜ、同じファスティングをしても、感じ方に違いがあるのでしょうか。
先生は、ファスティングについてこのようにお話しされていました。
「ファスティングが合っている人もいれば、合っていない人もいます。そして、行うタイミングも大切です」
つまり、
ファスティングは、すべての人に同じように必要な健康法ではない
ということです。
今回は、腸内環境の視点から「ファスティングが合う人・合わない人」について先生に教わったことを書いていきます。
ファスティングとは?
ファスティングとは、英語の「fast=断食する」という言葉からきています。
一般的には、一定の時間または期間、固形物を控えたり、食事量を減らしたりする方法を指します。
現在はさまざまな方法があります。
・朝食を抜き、食べない時間を長くする16時間断食
・半日や1日だけ食事を控える方法
・数日間、酵素ドリンクなどを取り入れながら行う方法
・医療機関や専門家の管理のもとで行う方法
これらはすべて「ファスティング」と呼ばれることがありますが、内容は大きく異なります。
そのため、「ファスティングは身体に良い」「ファスティングは危険」と、一言で判断することはできません。
期間や方法だけでなく、
その人の年齢、
体格、
栄養状態、
生活習慣、
持病、
服薬状況、
そして腸内環境によっても、身体への影響は変わります。
腸は「たくさんの作業員が働くトンネル」
前回までのコラムでは、腸を、
「テニスコート一面分ほどの広い場所を、内側にくるっと巻いたトンネル」
に例えてきました。
そのトンネルの中では、さまざまな腸内細菌が「作業員」のように働いています。
ある菌は食物繊維を利用する。
ある菌は発酵に関わる。
ある菌は、ほかの菌がつくったものを利用する。
このように、さまざまな種類の腸内細菌が、それぞれ異なる役割を担っています。
前回の「腸活で一番大切なのは善玉菌ではなく多様性」のコラムでもお伝えしたように、腸内環境では、一つの菌だけを増やすのではなく、さまざまな菌がバランスよく存在することが大切だと考えられています。
では、食事を一定期間控えるファスティングをすると、腸の中では何が起こるのでしょうか。
先生の例え「トンネルの中を一度きれいにする」
先生は、ファスティングをとても分かりやすく説明されていました。
「腸のトンネルの中を、一度きれいにするようなイメージ」
です。
食事を控えることで、普段より腸へ入ってくる食べ物の量が減ります。
日頃から食べすぎている方にとっては、食生活を見直したり、胃腸への負担を減らしたりするきっかけになる場合があります。
また、ファスティングを始めることで、
「普段、空腹ではないのに食べていた」
「間食が習慣になっていた」
「甘い飲み物をたくさん飲んでいた」
と、自分の食習慣に気づく方もいます。
このように、ファスティングは単に「食べないこと」ではなく、自分の食生活を見直すきっかけとして活用されることもあります。
しかし、先生は同時に、
「トンネルの中をきれいにすれば、全員の腸内環境が良くなるわけではありません」
とも話されていました。
悪玉菌が多い人と、善玉菌が少ない人では目的が違う
先生のお話で特に印象的だったのが、
「悪玉菌を減らしたい人と、善玉菌を育てたい人では、必要な腸活が違う」
という考え方です。
例えば、腸の中で好ましくない菌が増え、食生活も乱れている人がいるとします。
その場合、一時的に食事内容を見直し、食べすぎや過剰な間食を減らすことが、腸内環境を整えるきっかけになる可能性があります。
一方で、もともと食事量が少なく、腸内細菌の多様性も低く、必要な栄養が不足している人が、さらに長時間食べない状態を続けたらどうでしょうか。
腸内細菌は、私たちが食べたものを利用して活動しています。
特に食物繊維などは、腸内細菌が利用する大切な材料です。
食事を極端に減らすことで、育てたい菌に必要な材料まで不足してしまう可能性があります。
つまり、
「食べない方が良い人」だけではなく、「必要なものをきちんと食べた方が良い人」もいる
ということです。
ファスティングが合う可能性がある人
ファスティングが合うかどうかは、自己判断だけで決めることはできません。
ただし、生活習慣を見直すという意味では、次のような方は「食べ方を整えること」が役立つ場合があります。
・常に何かを食べている
・お腹が空いていなくても間食する
・夜遅い時間に食べることが多い
・脂っこい食事や加工食品に偏っている
・甘い飲み物を頻繁に飲む
・食べすぎた翌日も同じ量を食べている
このような場合は、いきなり長期間の断食をするのではなく、
間食を減らす、
夜遅い食事を見直す、
腹八分目を意識する、
食事と食事の間を適度に空ける、
という方法から始める方が、安全で続けやすいこともあります。
大切なのは、
「何日食べなかったか」
ではなく、
普段の食生活を整えられたか
です。
ファスティングが合わない可能性がある人
一方で、食事を制限することで、身体への負担が大きくなる可能性がある方もいます。
例えば、
・もともと痩せている
・食事量が少ない
・冷えや疲れを感じやすい
・筋肉量が少ない
・栄養不足が心配される
・食事を抜くと強い頭痛やめまいが起こる
・過去に極端な食事制限を繰り返している
このような方は、「食べすぎを減らす」よりも、「必要な栄養をきちんと摂る」ことが優先される場合があります。
「空腹の時間が長いほど良い」とは限らない
近年は、「空腹時間を長くつくること」が注目されています。
しかし、空腹の感じ方や必要な食事量は人によって異なります。
先生は、腸内細菌の視点から、
「食事を長く抜くことが、すべての人の腸内環境に良いとは限らない」
と話されていました。
例えば、
朝食を抜いたことで昼食を食べすぎる。
夕方に甘いものが欲しくなる。
夜に食欲が止まらなくなる。
このような状態では、食べない時間をつくったとしても、一日の食生活全体が乱れてしまう可能性があります。
大切なのは、
空腹時間の長さだけを見るのではなく、
・一日の栄養バランス
・食事量
・食後の体調
・睡眠
・便通
・気分
まで含めて、自分の身体を見ることです。
ファスティングは「終わった後」が重要
先生は、ファスティングについて、
「ファスティングは回復食が大切」
と話されていました。
食事を控えた後に、
いきなり脂っこい料理を食べる。
大量のお肉を食べる。
甘いものを一気に食べる。
お酒をたくさん飲む。
このような食べ方をすると、胃腸へ大きな負担がかかる可能性があります。
先生の例えでいうと、ファスティング後の腸は、
「一度きれいに整えた畑」
のような状態です。
そこへ最初に何を入れるかは、とても大切です。
回復食では、体調を見ながら、
・おかゆ
・やわらかく煮た野菜
・具だくさんの汁物
・消化しやすい食事
などを少量から取り入れ、少しずつ通常の食事へ戻していく方法があります。
ただし、適切な内容は、ファスティングの期間や体調によって異なります。
長期間のファスティングを行う場合は、専門家の管理のもとで行うことが大切です。
よもぎ蒸しとファスティングを同時にしてもいい?
ファスティング中に、よもぎ蒸しを受けたいという方もいるかもしれません。
しかし、食事量が少ない状態では、普段よりエネルギーが不足していたり、血糖値や血圧の変化によって、ふらつきや気分不良を起こしやすくなったりする可能性があります。
よもぎ蒸しでは身体が温まり、汗をかくこともあります。
そのため、長時間の断食中や体調が不安定なときは、無理に行わないことが大切です。
空腹が強い、
めまいがする、
頭痛がある、
強い疲労感がある、
体調がいつもと違う。
このような場合は、よもぎ蒸しを控え、まず身体を休めましょう。
ファスティングと温活を組み合わせる場合も、
「たくさん汗をかけばデトックスできる」
と考えるのではなく、水分補給や体調管理を優先することが大切です。
腸活は「減らす」だけではなく「育てる」こと
腸活というと、
「悪いものを出す」
「食べない」
「小麦を抜く」
「糖質を減らす」
など、「減らすこと」に注目しがちです。
しかし、腸内環境を整えるためには、
必要な栄養を摂る。
食物繊維を摂る。
さまざまな食材を食べる。
よく眠る。
適度に身体を動かす。
身体を冷やしすぎない。
という「育てる視点」も大切です。
ファスティングは、腸活の選択肢の一つではあります。
しかし、ファスティングだけが腸活ではありません。
今の自分に必要なのは、
「減らすこと」なのか。
「育てること」なのか。
そこを考えることが、自分に合った腸活への第一歩です。
まとめ
ファスティングは、
「良い健康法」
「悪い健康法」
と、一言で決められるものではありません。
先生がおっしゃったように、
ファスティングが合う人もいれば、合わない人もいます。
食べすぎや間食が多い方にとっては、食生活を見直すきっかけになることがあります。
一方で、もともと食事量が少ない方、痩せている方、冷えや疲れが強い方にとっては、さらに食事を減らすことが身体の負担になる可能性もあります。
そして、ファスティングで大切なのは、
「何日食べなかったか」
ではありません。
終わった後に何を食べるのか。
その後、どのような食生活を続けるのか。
自分の身体の変化を見ながら、無理なく整えていけるのか。
そこが大切です。
腸活は、ただ腸の中を空っぽにすることではありません。
さまざまな腸内細菌が働きやすい環境をつくり、必要な栄養を届け、身体全体を整えていくことです。
流行している方法をそのまま取り入れるのではなく、
「今の私の身体には、何が必要だろう?」
と考えること。
それが、自分に合った腸活を見つけるための大切な一歩なのです。

