【医学コラム Vol.25】ハーブの成分はどう身体に届く?

ハーブの成分はどう身体に届く?飲む・嗅ぐ・触れるの違いを医師が解説

〜皮膚と粘膜では吸収が違う?道下先生に聞く、植物成分と身体の仕組み〜


※このシリーズは予防医学の専門医から教わったことをコラムにしてます

目次

同じハーブでも、取り入れ方によって身体への届き方は違う?

ハーブティーとして飲む。

アロマとして香りを楽しむ。

肌に塗る。

よもぎ蒸しのように、植物の蒸気に包まれる。

私たちは日常生活の中で、さまざまな方法でハーブに触れています。

では、同じ植物を使っていても、取り入れ方によって身体への届き方は変わるのでしょうか?

今回、医師の道下先生との対談で、こんな質問をしました。

「生薬やハーブの成分を、口から飲む場合、香りとして嗅ぐ場合、皮膚や粘膜に触れる場合では、身体への作用はどのように違うのでしょうか?」

先生から返ってきたのは、とても興味深いお話でした。

「成分によって、どこから取り入れるのが適しているかが違います」

これは、ハーブの働きを理解するうえで大切な考え方です。

今回は、道下先生のお話をもとに、植物成分が身体に届く仕組みを医学的な視点から解説します。


1. なぜ成分によって取り入れ方が違うのでしょうか?

道下先生は、ハーブの吸収を説明する際に、医薬品を例に挙げられました。

例えば、病院で処方される薬には、飲み薬、点鼻薬、塗り薬、貼り薬などがあります。

同じ薬でも、すべて口から飲むわけではありません。

それは、成分の性質や、どこに作用させたいかによって、適した投与方法が異なるからです。

飲み薬は、消化管から吸収されて作用するものがあります。

点鼻薬は、鼻の粘膜に直接作用するものや、粘膜から吸収されるものがあります。

塗り薬は、皮膚の表面や内部に作用するよう設計されています。

つまり、身体に成分を届ける方法は一つではないのです。

ただし、医薬品は成分量や吸収性を調べて設計されています。

天然のハーブを同じ方法で使用したからといって、医薬品と同じように吸収されるわけではありません。


2. ハーブを「飲む」と身体の中で何が起こる?

まずは、ハーブティーなどを口から取り入れる場合です。

道下先生は、飲んだ成分が消化管を通り、腸で吸収された後、血液によって肝臓へ運ばれる仕組みを説明されていました。

例えば、ハーブティーを飲むと、その中に溶け出した成分は胃や腸へ移動します。

成分によっては、消化液や腸内細菌などの影響を受けながら変化します。

そして、吸収された成分の多くは、腸の血管から門脈という血管を通って肝臓へ運ばれます。

肝臓は身体の中の「加工工場」

道下先生は、肝臓の働きを工場に例えて説明されていました。

肝臓では、吸収された成分の一部が分解されたり、別の物質に変化したりします。

これを「代謝」と呼びます。

その後、成分や代謝物の一部が全身の血液循環へ移行します。

ただし、飲んだハーブの成分がすべて吸収されるわけではありません。

胃酸や消化酵素によって変化する成分もあれば、吸収されずに排出される成分もあります。

口から取り入れた成分は、消化・吸収・代謝という過程を経て身体に作用する可能性があるのです。


3. ハーブを「嗅ぐ」と身体にはどう届く?

次に、香りとして取り入れる場合です。

道下先生は、鼻の粘膜には血管が豊富に存在することについて説明されていました。

実際に、鼻の粘膜には多くの血管が分布しています。

点鼻薬の中には、この粘膜から成分を吸収させるように設計されたものもあります。

しかし、ハーブの香りを嗅ぐ場合には、もう一つ重要な仕組みがあります。

それが「嗅覚」です。

植物の香り成分が鼻の奥にある嗅覚受容体に結びつくと、その情報が神経を通じて脳へ伝わります。

その結果、私たちは香りを感じたり、過去の記憶を思い出したりします。

例えば、好きなハーブの香りを嗅いだときに、気持ちが落ち着くように感じることがあります。

これは、香りの情報が脳で処理されることと関係しています。

ただし、香りを感じることと、香り成分が血液中に大量に吸収されることは別です。

吸い込んだ成分が身体にどの程度取り込まれるかは、成分の性質や濃度、吸入条件などによって異なります。


4. ハーブを「皮膚に触れさせる」とどうなる?

続いて、皮膚からの吸収についてです。

道下先生は、皮膚について、

「皮膚は硬く、成分を通すのが難しい」

という趣旨のお話をされていました。

実は、私たちの皮膚には、外からの異物や刺激から身体を守る重要な働きがあります。

その中心となるのが、皮膚の最も外側にある「角質層」です。

角質層は、外部からの物質が簡単に身体の中へ入り込まないようにするバリアとして働いています。

そのため、皮膚にハーブの成分を塗ったとしても、すべてが血液中へ吸収されるわけではありません。

成分の分子量、脂溶性、濃度、製剤の性質などによって、皮膚への浸透性は大きく異なります。

また、皮膚表面にとどまって作用する成分と、皮膚を通過して全身へ移行する成分は区別する必要があります。

例えば、保湿化粧品は主に皮膚表面や角質層の状態を整えることを目的としています。

一方、医療用の貼り薬には、皮膚を通して薬の成分を体内へ届けるよう設計されたものもあります。

同じ「皮膚に触れる」という方法でも、その働きは異なるのです。


5. 皮膚と粘膜では吸収のしやすさが違う?

今回の対談で、特に興味深かったのが、皮膚と粘膜の違いについてのお話です。

道下先生は、鼻や女性のデリケートゾーンなどの粘膜について、皮膚との構造の違いを説明されていました。

粘膜とは、鼻、口、消化管、膣などの内側を覆っている組織です。

皮膚と比較すると、部位によっては角質層がない、あるいは薄いなど、異なる構造を持っています。

また、粘膜には血管が豊富に分布している部位もあります。

こうした特徴から、特定の成分が皮膚より吸収されやすい場合があります。

ただし、ここで重要なのは、すべての粘膜が同じように吸収するわけではないということです。

例えば、鼻の粘膜と口の粘膜、膣の粘膜では、それぞれ構造や性質が異なります。

さらに、成分の分子量や濃度、接触時間などによっても吸収性は変わります。

そのため、「粘膜だから何でも吸収される」「皮膚の何十倍も吸収する」と一律に説明することはできません。


6. 身体を温めるとハーブの成分は吸収されやすくなる?

道下先生との対談では、身体を温めることと皮膚の吸収についても話題になりました。

先生は、温度や接触時間などが、皮膚からの成分の取り込みに関係する可能性について説明されていました。

確かに、温度や皮膚の水分状態は、一部の成分の皮膚透過性に影響することがあります。

しかし、身体を温めることで皮膚のバリア機能がなくなるわけではありません。

また、温めればどのような植物成分でも吸収されるということでもありません。

吸収の程度は、成分の性質や使用条件によって異なります。

そのため、よもぎ蒸しによって植物成分が皮膚や粘膜からどの程度吸収されるかについては、個別の科学的な検証が必要です。


7. よもぎ蒸しではハーブの成分が身体に入るのでしょうか?

よもぎ蒸しは、温めた植物の蒸気に包まれながら過ごす温浴習慣です。

よもぎなどの植物には、さまざまな化学成分が含まれています。

しかし、植物に成分が含まれていることと、その成分が蒸気によって身体に届き、健康効果を発揮することは同じではありません。

植物成分が蒸気中にどの程度含まれるのか。

皮膚や粘膜からどの程度吸収されるのか。

吸収された場合、身体の中でどのような働きをするのか。

こうした点については、十分な科学的検証が必要です。

現時点では、よもぎ蒸しによって特定のハーブ成分が膣粘膜から治療に必要な量だけ吸収されるという確かな根拠は確立されていません。

また、デリケートゾーンの粘膜は刺激を受けやすいため、高温の蒸気や刺激性のある成分には注意が必要です。

よもぎ蒸しは、植物の香りや温かさを楽しみながら、ゆったりと過ごすセルフケアの一つとして考えることが大切です。


8. ハーブを暮らしに取り入れるなら、何を選べばいい?

道下先生との対談を通して感じたのは、ハーブの取り入れ方を一つに限定する必要はないということでした。

例えば、ハーブティーを飲む場合には、食品としての安全性や飲みやすさを確認すること。

香りを楽しむ場合には、自分が心地よいと感じる香りを選ぶこと。

肌に使用する場合には、刺激やアレルギーに注意すること。

そして、よもぎ蒸しを利用する場合には、温度や時間を無理のない範囲に調整することが大切です。

同じ植物でも、飲む・嗅ぐ・触れるという方法によって、身体との関わり方は異なります。

目的や体調に合わせて、安全に取り入れることを意識しましょう。


よくある質問

Q. ハーブは飲むのと嗅ぐのでは、どちらが吸収されやすいですか?

一概には比較できません。飲む場合は消化管での吸収、嗅ぐ場合は嗅覚による情報伝達や一部成分の吸入が関係します。成分や目的によって適した方法は異なります。

Q. 粘膜は皮膚より成分を吸収しやすいのでしょうか?

成分や部位によっては、皮膚より吸収されやすい場合があります。ただし、すべての成分が粘膜から吸収されるわけではありません。

まとめ|ハーブは「何を使うか」だけでなく「どう取り入れるか」も大切

今回の道下先生との対談で、特に印象的だったのは、

「成分によって、適した取り入れ方が違う」

という考え方でした。

口から飲む場合には、消化管での吸収や肝臓での代謝が関係します。

香りとして嗅ぐ場合には、嗅覚を通じた脳への情報伝達が重要です。

皮膚や粘膜に触れる場合には、それぞれの組織の構造や成分の性質によって、吸収のしやすさが異なります。

同じハーブでも、身体への届き方は一つではありません。

だからこそ、植物の持つ成分だけに注目するのではなく、身体の仕組みを正しく理解することが大切です。

よもぐるみでは、これからも植物の魅力と医学的な知識の両方を大切にしながら、女性の健康づくりに役立つ情報をお届けしていきます。

植物を知ることは、自分の身体を知ることにもつながります。


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